式を挙げて二か月後

新婚旅行の予定を決めた

行き先は『ハワイ』だ

彼は海外に行った事がない

理由は「飛行機に乗りたくないから」だ

この４２年間
一度も海外に行った経験がないのは珍しいと思うのは
私は南国や大陸が好きな海外経験者だからだ

持ち物リスト
海外の注意事項
ドル紙幣の説明リスト

あれこれ作成したが
「そのくらいわかってるよ」と強気な発言

ドル紙幣に替えるのも
経験させよう、と私は彼にお願いした

銀行から直接何度確認の電話がきたことだろう・・・

最初だから仕方がないが
私の初めてのドル紙幣交換は１０代の頃だったし
独りだった

彼の不安な電話口の声が
子供を初めて買い物に行かせたような気分だ

帰宅した彼に
ふと思い出した話をもちかけた

「そうそう！とにかく向こうではカードを使うからね！
　　限度額上げておいてね」

「カード？持ってない」

「え？一枚も？！！」

「あー 、確か銀行のカードについてたっけなー」

「使ったことないの？」

「ないね、カードより現金派なんで！！」

このキャッシュレスの時代に
カードを使ったことが無いとは･･･

心配ではあったが
海外ではカードが必要だからと説明をしておいた

まさか
この軽い説明が
のちの後悔につながるとは思いもよらず・・・

新婚旅行の出発、三日前

天気が良くて洗濯物に追われていると
携帯が鳴った

「お義母さんだ！！」

式を挙げて
初めてのお義母さんからの電話だった

きっと旅行の件で電話くれたのかな？
日程はメールしておいたけど・・・

「はい！もしもし？」

すると

田舎に住むお義母さんから矢継ぎ早に質問を投げられた

『旅行の準備は出来た？』
『ハワイなんてなー、遠いんやろー？』
『ハワイは今何時なん？？』
『うちの○○はなぁー 海外なんて初めてなんよぉ心配でなぁ』
『毎日ちゃんと寝てるんかなぁ？寝れんとちがうかぁ？』
『いつ何時に出発なん？』
『ほな、いつ何時に帰ってくるん？』
『飛行機がなぁー　嫌いなんよぉ大丈夫やろうか？』
『沖縄に一度だけ飛行機に乗ったことがあったんやけどなぁ
　　飛行機乗るとな、耳がキーンてなる言うてな･･･』

その沖縄に行った飛行機は
彼が３０代の頃の話だ･･･
決して小さい頃の可愛い話では無い

『で、ハワイってところは治安はどうなん？？』
『片道何時間かかるん？』
『ハワイって英語なんやろ？日本語は通じんのやろうか？』
『ハワイと日本じゃ、時差はどのくらいあるんやろうか？』
『泊まるホテルはお風呂とかついてるんかのぉ？』
『ハワイってところは何か食べられるところはあるんか？』
『あの子、食べられるものはあるんやろうか』

まず・・・・

海外にだって肉はある

そして彼は肉が大好物なことくらいお義母さんも知っているはず

食べ物に困り果て、餓死することは無い

ハワイをどんな怖いところと想像しているのか

地球の裏側でもないし

食べ物に不自由な国でもない

１メートル置きにスリにあうような場所でもなく

どちらかと言うと

ハワイほど日本人とすれ違う外国は無いし

ハワイほど日本人が心地いい外国は無い

なんなら日本語も通じちゃう店もある

これだけハワイ好きの日本は
テレビ番組に『ハワイ』を数々取り上げていて
行った事なくても
どんなところなのか？くらいは
知らない人は居ないであろう･･･

今の時代
携帯で
『ハワイ』と打ち込んだだけで
どれだけの情報を得ることができるか

と思っていたところだ

田舎の田舎の遠い村で生活しているお義母さんたちには
ハワイなんぞ『恐ろしい海外』としか思えないのかもしれないが･･･

前々からハワイに行く話はしていたのだから
テレビ番組を観るとか
本屋さんでパラパラ見てみるとか
携帯でリサーチしてみるなど

その興奮をぶつけないで済む方法はあっただろう

興奮気味に話してくるお義母さんを落ち着かせて
一つ一つ丁寧にお答えした

とにかく初めて海外に行く我が子が
心配で心配で仕方がないようだ

長い電話を終え、やっと一息ついたが

その日の夜・・・・

私の母からメールが届いた

『あなたの夫の母親から電話がかかってきたわよ！』

まさか？！

『ものすごい勢いで質問攻めにあいました』

やっぱり？！

『うちの子は海外が初めてだからー
　ハワイってところは治安は大丈夫なんですかねー
　うちの子は沖縄に一度飛行機で行ったことがあるんですが･･･』

まさかの

同じ内容

うちの実家にまで

はるばる電話してきて

しゃべるだけしゃべったようだ

私の母が
『大丈夫ですよ、ハワイは日本人ばかりですから』と言って

無事、電話を切ることが出来たとのこと

お義母さん・・・・

怖すぎます・・・・

出発前も

飛行機に乗る直前ギリギリまでLINEが届いていて

『今あの子どうしてる？大丈夫か？』

『あと３０分で出発やね、出る時連絡してね』

『向こうに着いたらすぐに連絡してね』

こりゃ
帰国したらまた大変だわ・・・・

都度、彼の写メをお義母さんに送り続けた

「お義母さん、ホント心配なんだねー またLINE来てるよ」
「俺が飛行機嫌いだからねー」
「ここまで連絡取り合うとマザコンみたいだねー」
「マザコンは、なっちゃんでしょ？」
「私がマザコン？？それを言うならファザコンでしょ？」
「え？ファザコンて何？」
「あなたとお義母さんがマザコン
　私と父はファザコンのようなベタベタな関係じゃないよ？」
「そういう意味なの？でもなっちゃんとお義母さん仲良いからマザコンじゃん！」
「私と母は友達みたいに仲がいいだけで、マザコンとは違います！」

ていうか、マザコンの意味がわかっていない・・・・・

結婚して
いろいろな意味で
不安

今日は久しぶりに

朝から通常通りご出社されて

なんだか心がパ～っと晴れた感じがした

開放～！！！！！

ずっと自粛で
狭いアパートに
二人で24時間過ごしているから
観たいドラマやバラエティー番組が観られない

私も小さい頃からテレビ好きで

ドラマやバラエティー番組

たくさん観てきた

新しく始まるドラマも

取りあえず1話目は録画して観る

面白かったり
続きが観たければ
毎週録画に変更する

だとしても

私が録画するのは7個くらい

もちろん
放送中に観られるならば
録画もしないで観る

結婚して
半年くらいしてから
ドラマを観たくて録画した

録画一覧

どこを探しても

私の録画したドラマが見つからない･･･

踊る大捜査線

ノーサイドゲーム（再放送）

アベンジャーズ

ロッキー

ダイハード1

ダイハード2

アルマゲドン

ターミネーター

釣り番組×5つ

ゴルフ番組×3つ

アニメ番組×4つ

グルメ番組

サッカーの試合

ゴルフの中継

競馬の中継

どこまでスクロールしたって

私の最近録画したドラマが出てこない！！

今まで付き合ってきた彼氏の録画一覧なんぞ

見たことがなかったけど･･･

こんなものなんだろうか？？？？

もちろん！私が観たいドラマは「俺も観たい！」と言われているので
これらの録画一覧に
ドラマ関係も追加される

一緒に暮らすことで
一緒にリビングに居ることが多いせいもあり
一緒に録画したものを観るとしたら
私も観たいドラマやバラエティー番組

すると

彼が一人で観たい『それら』は
いつ観られるのか？

私が入浴しているちょっとした時間に
30分アニメを観ていたり
ご飯を作っているときに
続きの釣り番組を観ていたりするが

そんなに『それら』は
観たかったのか？

つい、この間
再放送した「ノーサイドゲーム」なんて
日曜劇場で毎週9時から一緒に観ていたドラマだ
観たばっかりのドラマ再放送を録画してまでも観たいのか？

私は父に相談してみた

「男の人ってサッカーの試合や競馬まで録画してまで観たいのかな？」

「試合や競馬なんて録画してまでも観ないなー」

私も同感だ

どうしても観たかった試合

どうしても観たかった釣りの一瞬

わからなくは無いが

観終わっていても

消さないで保存しているのだ

「この沢山ある録画番組、観たら消さないと容量が足りなくなるよ？」

「いや消さないよ！すごく良い試合だったしね！」

「競馬は観たし、終わったんだし、消去してくれない？」

「これもさ～　すごい良い走りしてさー感動だったんだよ」

「映画も残したいならDVDに焼くとかして消去しないと容量くうよ」

「DVD焼こうかなー　でもすぐ再生して観たいときあるしさー」

映画関係は
彼がもともと独身時代から
すぐに沢山の映画がいつでも観られる、という
有料契約をしている為
録画を保存しておく必要がない

釣り番組は
一週間に5つも録画してまでも
欠かせない番組なんだろうか？
これこそ観たらすぐにでも消去してもらいたいぐらいだ

ゴルフ番組は
ほぼ、一日放送しているものを録画され
長い！！！容量がくう！！！

アニメ番組は
同じ題名のアニメを回が違うから、とかで
２，３箇所録画している
ごっちゃにならないのか？？

たまにチャンネルをまわしているときに
「お！懐かしいな！」と聞こえると
あっという間に「毎週」で予約が完了している

大人なら「懐かしいね」でスルーすると思うが･･･

『毎週録画』　する？！

私の観たいドラマが一週間に7つあったとしても
普通に思えてくる
いや、曜日別に観たいものがあれば
そのくらいの数は仕方あるまい

40過ぎまで独身でいると

どの男性も

こんなにテレビに

依存してしまうものなんだろうか

私もテレビは大好きだが
懐かしいアニメが目に飛び込んできても
録画まではしないであろう

好きな選手が出ていたとしても
その長いゲームを録画することはないであろう

結婚して

同棲が始まって

ゴルフバッグは４つ廃棄してもらったが･･･

釣竿があるわけでもなく

アニメオタクのようにキャラクターのグッズが並んでいることもない

購入したDVDコレクションなども

もちろん　ない

『録画一覧』て　ある意味怖い･･･

その人の性格がわかる、というか

そういう人なんだ、と

知ってしまうというか

とにかく―――――

夏から始まるドラマの予約ができないぞっ！

容量をあけてくれ――――

子供のまま大人になったウチの王様

６月から学校もお店も再開し始めた

コロナのおかげでどれだけの人が辛い思いをしただろう

でも徐々に解除され

６月の後半

県をまたいで移動が可能まで解除された

なのに！！！？

ウチの王様は　テレワーク続行！！！！

ご近所の旦那様や
友人の旦那様
姉の旦那様
みんな通常に近い状態で通勤している中

いまだに

ここリビングにて

ウチの旦那は

テレワークしている･･･

「もうみんな通常通り通勤しているけどいつ会社行くの？」
「もう会社の方針でこのままテレワークになりそうだね」

「え？！でもこのままずっと家で仕事するってやりづらいでしょ？」
「結構大丈夫！
　　通勤ラッシュも乗りたくないし行かないで済むならねー」

この自粛生活が
すっかり体と気持ちを
甘やかせてしまったようだ

「家の中でずっと座ったままも体によくないしー」
「会社行ってもずっと座ったまま仕事してるから変わらないよ」
「家で残業しても、クーラーつけて仕事していてもお金くれないでしょ？」
「当たり前だろー！給料は基本給の定時までしかもらえないし
　電気代なんて支給されるわけないだろう」

解除されて
ステップが進み
映画館さえも再開されたというのに

我が家は４ヶ月前と何も変わらないのだ････

それどころか
周りの企業さんが通常通り
業務が戻ることによって
今まで控えざる負えなかった会議、打ち合わせが
増えてきているのだ

いつもの９時から始まる朝会が３０分間

その１０分後
テレビ会議　３０分

その１０分後
テレビ会議　２時間

そしてお昼

リモートの邪魔にならないよう
午前中ずーーーーっと 寝室にこもる私

あれ？午前中が終わっちゃった！！

焦りとショックを同時に味わっている所へ

「終わったよー さて、お昼どーするの？何作るの？」

こんな生活がエンドレスにこれから続くなんて耐えられません！！

子供だって作れません！！

不機嫌な妻に気がついた彼は

「そんなこと言ったって会社の方針だし
　毎日じゃないんだからさー」

これを言われれば「そうだねー」で許されるのか？！

翌週になり
私の不機嫌さが伝わったのか

「週に２回は会社行くことにしたよ」

『当然だよ！！！』　私の心の声が叫ぶ

と、すぐに　

『え？！ たった２回だけ！！』　私の心がつぶやいた

この自粛中に
家でも仕事が出来るように
会社がいろいろ考えてパソコンを使えるようにしたせいで
本当に会社に行かなくても仕事が出来るようになってしまった

部屋数がある大きなマンション

階がわけられる一戸建て

そんな家に住んでいるなら苦でもないのかもしれないテレワークだが

寝室とリビングしかないこの狭いアパートで
テレビ会議をやるのは無理があるっ！！！！

会社はズルイ

定期代も払わないで済む

給料は定時分のみ支給

ボーナスは出ません

テレビ会議は通常通りのダラダラリモート会議

『ここは会社の会議室じゃない！自宅のリビングなんだ！！』

織田裕二さん演じる青島刑事なら

そう叫んでくれるはず････

こちらは
雨でも晴れでも
毎日リビングとキッチンの電気をつけたまま

テレビ会議中は暗いからと部屋の電気は必須
エアコンも扇風機もつけっぱなし

食事も
朝、昼、晩　作っては、片づけるの日々

今までの平日の独りランチなんて
冷蔵庫にあるもので簡単に済ませていたのに
ウチの王様がいるとなるとそうもいかない
「肉はー？肉ないのー？」と言われ
食費も増えた

良い事なんて
ひとつもない

自宅で仕事してるのをわかっていながらも
上司から夕方の忙しい時間に１時間以上もの長電話
その間にもユーザーから着信が何件も来ていて
電話に追われ
資料作りに手がまわらないようだ

そんなバタバタしっぱなしで
夕飯も用意出来ない状態の中
（電話中は水道の水すら出せない）

あの長電話のクドイ上司から再び夜の７時前に着信

資料を作るよう依頼の電話がかかってきた

夜の８時過ぎてもクドクドと話していて

こっちに家族がいることも気にせず一時間以上

こっちは仕事している本人のみならず
家族までご飯も食べずに待っているのだ
新婚に赤ちゃんでもいたらどうしてくれる？
お風呂入れたり、ミルク飲ませたり
赤ちゃんは待ってはくれない

食事をする我が家のダイニングテーブルは
夜の８時過ぎても

パソコンやマウスパット
インクがなくなったボールペンが４本
赤ペンに電卓
資料にパンフレット
カタログの本など
山積みだ

『自宅なんだから１８時で仕事切り上げろよ！』

なんて気の利いたセリフでも言える上司はいないのか？！

本当に

このまま

我が家の緊急事態宣言は

解除されないのだろうか･･･

いや、

だとしても

他の旦那様なら　どうしているだろうか？

ふと、思ってしまう･･･
『ウチの旦那だからこうなのかな』

言われた通り自宅で仕事をしているだけ･･･

会社の方針とはいえ
自宅では仕事ができない人もいるだろう

他の策を考えて

くれないものか？？？

この器の小さい上司と

自分の家族を守れない
自分の状況を変えることができない夫

独り暮らしに戻れば
お互い
何も不自由がない

スピード婚をしたけれど・・・

スピード離婚も

ありうるのか・・・？

今日もこうして
寝室にこもるスタート

こんな朝からずっと雨で
梅雨寒の空を眺めていると

そんな事を考えてしまう今日この頃・・・