ウチのハダカの王様

スピード結婚した夫婦の話。生活をスタートさせたが・・・初めて知る夫の言動を書き留めている。

牛肉・豚肉・鶏肉


週末になると
食材の買い出しに付き合ってくれる彼


旦那さんがカゴを持ってくれて
あ、これ安いねー
これ美味しいよねー


などと
二人でカゴに入れていく様子


憧れる風景だ





それは
野菜の売り場まで・・・・






ウチは


お肉売り場に来ると人が変わる


いや
最近では近くなると
「お肉見てくるね!」と先に行ってしまうが・・・



私が牛肉を吟味していると


「牛肉ならコレ!!!」
「焼肉にするならこの肉だな!」
「ステーキならこの肉!」


先に見て選んだものを見せてくるのだ



「今日は牛肉は買いません、見ただけ」
そう言って
私は豚肉のゾーンに入った



「豚肉ならねーコレ!これが一番いい色してるよ」
「しゃぶしゃぶにするならコレが一番いい色してる」
「コレもなかなかいい感じなんだよね」


いくつかのパックを手に持って見せてくるのだ





値段を見ると




グラム300円代!!!!





高っ!!!家計がもたない!!!


ウマイに決まってる!!!!!




「あのねーグラム300円て高過ぎでしょ!」
「えーグラム300円だよ?美味しい肉食べたいじゃん」
「どこの家庭がグラム300円の肉普段食に食べてるのよ!」
「美味しい物を食べようよー」


出た!
『美味しいものを食べるなら高いとか関係ない』



何度も言うが
決して豊かな暮らしはしていない
むしろ42歳まで独身貴族だったウチの王様は
ゴルフ三昧で貯金もないのだから・・・




「毎日こんな高いお肉なんて買っていられません!」


「えー!」
反論をブツブツ唱えている




知らないふり知らないふり・・・



私は豚肉を1パック
カゴに入れた




「えー!!このお肉よりこっちのお肉の方が美味しいよ絶対!」




スーパーに並んでいるあまり変わりもないお肉のパック
悪くなっているものでも
賞味期限が迫っているものでもない


もちろん体重がオーバーしている王様の為に
脂身の少ないお肉を選んでいる私だが


ものすごい勢いで取り上げられた



「こっちがいいかなー
いや、こっちも捨てがたいなぁー」


「うん!二つとも買おう!」



出た!
『迷った時は2つとも買えばいい』






2つも買いません!!!!






鶏肉ゾーンに逃げ込んだ




慌てて
「鶏肉はねーコレがいい色してるよ」
「これはねー6つも入ってるのにこの値段!」
「この色味なら、こっちがいいかな?」




またもや
いくつかのパックを見せてくるのだ




「コレでいいです!
 二人暮らしなのに6つ入りなんて買いません」


「いい色してるし、お買い得じゃん」


「安くても冷凍しなきゃならないし
 子供もいない二人暮らしなんだか
 なくなり次第新鮮なお肉を買うのでいりません」


「えー!これお肉の色味も美味しそうなのにー」





こんなやり取りを
毎回行うのだ




お肉にうるさいというか


こだわりがあるようで


勝手にカゴに入れると


自分が持ってきたパックと交換してくるのだ






こんなに面倒くさいことは無い







平日
彼がテレワークしている間に
近所のスーパーでお肉をこっそりと買い出しに行く





国産に拘る王様だが


たまに大安売りで
カナダ産のお肉を買うこともしばしば





おいしく味付けをして夕飯に出してあげると






「この肉ウマイね!この前オレが選んだ肉でしょ?!
 やっぱ色が違うもん!めちゃくちゃ美味しいわ!」





結局


味を付けてしまえば


どの肉かすら


わからないのだ




「これは今日買ってきたカナダ産のしゃぶ肉ですけど」



そう教えてあげると



「えー!!!国産じゃないの?!


  ・・・でも美味しいね」







それからも
週末の買い出しのお肉売り場では
カゴに
入れる
入れない
が繰り広げられている





高級ステーキや高級焼肉
それは普段の夕飯に出るものではない


高ければいい、としか思っていない


スーパーでのお肉選びに
どこまで時間をかけるんだ


やきそばには
それなりの役目のお肉があるのだ





独身貴族の舌も


結局は奥さんの腕しだい








何も知らないで大人になった王様

実家に帰らせていただきますっ!


お付き合い期間も少ない中
狭いアパートで新婚生活がスタートした


このコロナの自粛生活のおかげで・・・


彼は3月からテレワークになった


恐ろしい事に
月曜から金曜日
毎朝9時から30分ほど
リモート朝会をするというのだ


(週に一度でいいだろう)



部屋は
対面キッチンリビング
5畳の寝室
洋室の3部屋だ



唯一の洋室は
長い間独り暮らしをしてきた二人の衣装ケースやラック
彼のスーツ関係
洗濯物などで埋め尽くされている


必然的にリビングにあるダイニングテーブルで
彼は仕事をすることになった



自粛生活を強いられ
近所の子供が毎朝外でサッカーの練習を始める



リモートの時間がせまると
「うるさいなー」と窓を全て閉める彼



食事が終わった食器を洗っていると
「それさー 後でやってくれる?」



洗濯物を干していると
「それさー 後でやってくれる?」



トイレから戻る私に
「行くなら会議の前に行ってくれる?」



「リモート会議のときは、寝室に行っててもらえる?」



そう・・・


妻のイライラが募る







毎朝家事をしながら観ている情報番組「スッキリ」
その中でお気に入りのコーナーが9時ぐらいから放送される


もちろん
仕事の電話がかかってくれば
テレビの音を消して・・・
という生活だ


どうしても
そのコーナーを観たい日だった


リモート会議が始まる前に
「音消して、静かにテレビの前で座って観てるから居てもいいでしょ?」


「えー・・・ 嫌だ!」


「音消して、静かに観てるんだから迷惑かけないじゃん」


「えー・・・ 嫌なの!そこに居られるのが嫌なの!早く出てってー!!」



カチン!!!



「前から言いたかったけどさー
   神経質過ぎるよ!

   近所の音くらい仕方がないでしょ?!
   ここは自宅なの!
   ここで生活してるの!
   食器洗ったり、洗濯物も太陽が出てるうちに干したいし

   トイレだって、いつ行ってもいいでしょ!!
   音が鳴ったって、自宅なんだから、ってドーンと構えて欲しい
   こっちだって静かにしてようと気を遣っているのに
   あれもこれも後にして、って無理でしょ!

   しまいには、早く出てって!とは何よ!!サイテー!!」    




こんなところで生活していられない


こんな状況で朝昼晩と食事作って


食器を洗い終われば「お昼なあに?」て言われて


お昼ご飯終わって片づけしていれば「夕飯なあに?」て言われて


夫の洗濯物洗って干して「なっちゃん電卓取ってー」


「なっちゃんそこのペン取ってー」


横目で見ながら
一人で大きなベッドシーツやカバーを背伸びして干して


独りの時間もなく


ホッと一息つく暇もなく動いて






テレワーク3ヶ月



もう限界!! 







「実家にしばらく帰らせていただきますっ!!!」







勢いよくカバンに服を詰め込んでいる私に


「なんでそんなに怒るの?!いつもどこかへ行ってくれてたじゃん」
「実家に帰らなくてもいいじゃん」
「ねーねーごめん、てばー」



私は勢いよくアパートから飛び出して実家へ








電車を乗り継ぎ
実家に到着すると
「私にLINE(メール)が届いてるわよ」と母




『この度は、なっちゃんがお世話になります
 朝どうしても観たいテレビがあって
 観れなかったもんですから
 いろいろバタバタしてしまいまして・・・
 長い自粛生活で私がテレワークしているのもあり
 ストレスが溜まってしまったのかもしれません
 しばらく帰らないみたいなので
 よろしくお願い致します』






先手必勝


まるで私が観たいテレビを観れないから
部屋を飛び出してきた、かのような内容のメール












家を出て3日目の夜


何も連絡がなかった彼から
珍しくLINEが届いた




『この三日間どこか、お出掛けできたのかな?
 今日は昼間にでも帰ってくると思ってたんだけど・・・
 明日オレ迎えに行った方がいいの?
 なっちゃん!オレ作戦考えたよ!帰ってからのお楽しみ!』








不安がよぎる・・・


まさか・・・









私の予想は的中









アパートの寝室にはA4サイズくらいの
ポータブルTVが置いてあった・・・
 







そういう事じゃ


ないんだよ、、、、






ウチのハダカの王様

結婚指輪

私はティファニーのリングが夢だった




本当に普通のリング



ティファニーと刻まれてなくてもいい



あのミントブルーの箱に入れられた
プラチナリングが憧れだった




彼と銀座のティファニーで待ち合わせして
指輪をみていた




リングに1粒のダイヤモンドが入ったデザインが目にとまった




これ 可愛い!




贅沢だと思いながらも
思わず「付けてみますか?」というティファニー店員さんの後押しに
「はい」と言ってしまった



普通のリングを考えていたのに
付けてみた1粒のダイヤモンド入りリング
めちゃくちゃ素敵☆


嬉しそうに見つめる私に
「似合うじゃん!石入りにしたら?」
と、すすめる彼



「そう??」
金額はもちろん数万円がプラスされる




これは一生ものだし
買い替えることも無いし


などと勇気づけるもう一人の私がいる




スタッフの方とサイズを見直したりしていると





「なっちゃん!これはどう?!」




彼がすすめてきたのは


その嬉しそうに眺めている1粒ダイヤモンドリングに


もう2粒 


ダイヤモンドがついている


3粒リングだった!!!




イヤイヤイヤ・・・・
そんな豪華なリング・・・


そうじゃなくてもココはティファニー



1粒の石が入っているのもためらってしまうのに



3粒の石が並んだリング・・・



金額は普通のリングが2本買えてしまうほど上がる!





「こんなすっばらしいモノ 怖くて普段付けられないよ」


「だって1粒付いてるものも3粒付いてるものも普段付けるリングでしょ?」


「そうだけど・・・ ダイヤモンドが取れたら怖いし」



そんな会話をしていると
「そのような普段の生活上では石が取れたりしませんよ」
スタッフの方がフォローを入れてくる




私は値段の事も考えたら
本当に1粒リングがいい!と思っていたのだが




「3粒デザインは嫌いなの?」




このセリフに「そうじゃないけどー」と答えてしまった





「じゃぁ 決まり!すみません、こっちの3粒リングの方でお願いします」







目も



口も



あんぐり



開いてしまった







「迷ったなら多い方がいいじゃん!」








これが


彼の口癖


良きにしろ


悪いにしろ






こうして


彼の口癖にのっかり



私の薬指には


3粒ダイヤモンドのリングが


はめられている







「迷ったらどちらも買えばいい」
「迷ったら多い方がいい」







この彼の考え方が
のちに
生活費を
苦しめるとは
知らずに・・・・